
書評『ビル投資というブルーオーシャンの歩き方』広田健太郎・著
2026.1.15
賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。
今回は、『ビル投資というブルーオーシャンの歩き方』 (広田健太郎・著/プラチナ出版/2025年12月)です。
再現性が低いからこそ、「ビル投資」はブルーオーシャン
ビル投資は、一般的な不動産投資とは違ったノウハウが必要で、また事業の再現性が低く、景気や地域経済の状況に左右されるため、その方法を解説する書籍はもちろん、投資家自体が少ない分野です。
ただ見方を変えると、難易度が高く再現性が低いからこそ、成功したときのインパクトは大きいブルーオーシャンの市場だといえます。
本書『ビル投資というブルーオーシャンの歩き方』は、実際にビル投資にはどのような種類があり、どのような基準を持って物件を探すのか、融資付けのポイントやリフォーム・リノベ、客付けからリスクヘッジまでを、模倣が難しく専門性の高い領域だからこそ、著者の実例をふんだんに交えて紹介しています。
著者である広田健太郎氏は、大学卒業後シンガポールのプロサッカーリーグでプロ選手として活躍し、その後レコード店を運営する傍らでビル投資をはじめ、2025年現在では年間家賃収入9,400万円、ビルと店舗30棟、合計80テナントを持つビル投資の専門家です。
本書で紹介されるビルは、都心の何億円もするような大型物件ではなく、主に地方都市にある1,000万円前後の雑居ビルが中心です。
ではどのような物件を選べばよいのか。広田氏は
- エリア外の物件は買わない
- 区分は買わない
- エレベーター付きの物件は買わない
という3つのポイントとその理由を紹介しています。なぜ、エレベーター付き物件を買わないのか。それは、“エレベーターはこわれるリスクがあり、毎月のメンテナンス費用もかかる”ため。エレベーターが設置された物件のほうがテナント数が増え、収益性も上がりそうですが、“自分の性格上、エレベーターを持つことで心配が増え、ストレスになるのが目に見えている”とのこと。
“ビル投資にもさまざまな種類がある <略> その中でも利益率が高いのはシャッター街にある飲食ビルを再生する方法です。”と、著者自身の経験から語られるシャッター街再生の事例は、一筋縄ではいかないビル投資の難しさに加えて、利益率もさることながら、地方都市の街に活気呼び戻すという地域貢献にも深く根差した取り組みとして、とても印象的です。
ビル投資 = ラクに稼ぐことのできる不労所得という甘えた幻想を打ち砕きつつも、単なる投資という枠では捉えきれないビル投資事業のやりがいや魅力が伝わってきます。加えて、リスクを勘案しつつも、ときには勢いで意思決定することの重要性や、ビル投資を行う上での覚悟について、深く考えさせられるエピソードなども紹介されています。
各章の終わりごとに、取り上げられる「僕の人生を変えてくれた本」やミニコラムといった広田氏の経営哲学の源泉が取り上げられている点も学びが多いポイントです。
一般的な不動産投資に限界を感じている中級〜上級投資家にとっても、次のステージを考えるための現場知に満ちた一冊です。
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