TOPコラム一覧ブックレビュー【書評】初心者からはじめる医師の不動産投資

賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。

今回は、『初心者からはじめる医師の不動産投資』(INASE・著)を紹介します。

『初心者からはじめる医師の不動産投資』INASE・著/新流舎/2025/1

医師や弁護士など、不動産投資の業界から見ればいわゆる”属性がよい人たち”。

当然属性が高いため、融資・ローン審査が有利にはたらき優良な物件や投資の拡大がしやすいとされる一方で、そういた初心者をカモにするような投資会社も多く存在し、いいように”くいもの”にされてしまうという話は、業界内外で良く聞く話です。

ましてや、多忙な医師としての仕事を務めつつ、将来の資産形成を同時に行うことは難しく、ついつい業者の言いなりや耳障りのよい甘言を鵜呑みにして、損失を出してしまう。しかし、本業の収入が一定あるため、なかなか赤字のキャッシュフロー状態に気付かないといったケースもよくあるようです。

そういった医師を取り巻く一長一短の不動産投資事情に対して、自身も医師ながら年間の家賃収入3,000万円超、アパート9棟、戸建て賃貸5戸、総資産3億1,800万円の不動産投資を行っているINASE氏が、自身の投資経験や成功のノウハウについて紹介したのが、『初心者からはじめる医師の不動産投資』です。

医師に特化した不動産投資本がこれまで少なく、そういったなかで医師ならではのポイントについて解説している本書。最低でも利回り10%以上の物件を推奨し、また”低価格帯の物件だと買える人の母数も増えるので、競争が激しくなります。専業大家や時間のあるサラリーマン大家にスピード勝負では勝てないので、わたしが推奨するのは比較的、高価格帯の物件です“と、医師ならその高い信用力で、最初から大きい物件を購入できる強みを前面に押し出している点などは思わず膝を打つポイントです。

また、そういった投資戦略や考え方だけでなく、マイソク(不動産チラシ)の読み方や現地調査の具体的なやり方やポイントについても詳しく紹介されています。

特に”仲介業者への営業回りが不動産賃貸業を成功させるための要です“とあるように、およそ投資初心者の医師(というか投資初心者)がやらないであろう、仲介会社への営業回りを推奨し、上流の物件にアクセスするといったノウハウ、また飛び込み時の会話の台本(スクリプト)の内容が紹介されている点は、並の不動産投資本とは一線を画した熱量を感じます。

加えて、医師や士業への不動産投資の営業手法として使われる「節税」という言葉やスキームが、一度も紹介されていないという点には好感が持てます。

本書を読み、一番に感じたことは「決して医師だけに向けた書籍ではない」ということです。タイトルこそ医師向けとなっていますが、多忙なビジネスパーソンや専門職に共通する時間的制約の中で、いかに効率よく不動産投資で成功するかという普遍的な知恵が詰まっています。

著者のINASE氏の経験に基づく実践的なアドバイスと、医師としての視点を織り交ぜた独自の投資哲学は、不動産投資の本質を見失わず、長期的な資産形成を目指す全ての人にとって示唆に富む一冊となっています。

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