
書評『億り人大家さんが教える 首都圏×地方 戸建て投資術』大家のプーさん・著
2025.10.6
賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。
今回は、『月1時間労働で家賃年収7000万円!億り人大家さんが教える 首都圏×地方 戸建て投資術』(大家のプーさん・著/宝島社/2025/9)を紹介します。
物件価格高騰・利回り減少だからこそ戸建て投資をおすすめする理由
近年、建材費の上昇や人口減少、インフレの影響を受け、不動産価格は大きく値上がりしています。不動産ポータルサイトの調査では、東京都23区の新築マンション価格は10年前に比べ約2倍に達したとの報道もあります。
価格上昇は投資用物件にも直撃し、特に首都圏では利回りの低下が目立ちます。既に物件を持つ投資家には売却益のチャンスとなる一方、これから投資を始めようとする人にとっては判断の難しい局面です。
本書は、こうした市況だからこそ「戸建て投資が有効」と説きます。戸建てには広さがあり、ペット可やリモートワーク需要など、マンションとは異なるニーズを取り込めます。さらに「出口戦略」が多様で、投資用物件としての売却だけでなく、土地や実需物件として売れる点も大きな強みです。
そしてなによりも、本書では利益倍増のカギとして強調されるのは「首都圏×地方」という組み合わせです。
資産価値は高いが利回りの低い首都圏戸建てと、資産価値は低いがキャッシュフローを生みやすい地方戸建てを組み合わせることで、双方の弱点を補完し、安定した資産形成を実現するという発想です。
著者自身のポートフォリオも公開されており、地方戸建てがキャッシュフローを支え、首都圏戸建てが資産性を担保する構造がわかりやすく紹介されています。
戸建て市場には「割安物件が出やすい」という特性もあります。”戸建ての売主は圧倒的に「投資家・事業者ではない」一般の方が多い”売主が「プロ」ではないため、相場を知らずに割安で出してくることがある”のです。また、相場より安く購入するための3つの具体策として「売り急ぎ案件を狙う」「問題を抱えた物件を狙う」「情報網を築く」を挙げ、実践的なアプローチも紹介しています。
本書にはノウハウだけでなく、著者の投資哲学も随所にちりばめられています。
- 「不動産で本当に大事な情報というのは、人の口からしか得られません。」
- 「会社員・消費者といった生き方で固められた価値観を壊し、投資家・事業者の考え方をインストールしていく必要があります。」
- 「変えないことを恐れるな。高値で買うことを恐れろ」
といった至言金句は、戸建て投資に関わらず、不動産投資全般で共通する重要な姿勢を紹介してます。
本書は、物件選定のチェックポイントから資金調達、リフォーム戦略、管理運営まで幅広くカバーしています。市況が変化し続ける不動産投資の世界において、「首都圏×地方」という複眼的アプローチは、リスク分散と収益最大化を同時に実現する現実的な戦略です。
時代の変化に柔軟に対応しつつ、着実に資産を築きたい投資家にとって、確かな指針を与えてくれる一冊といえるでしょう。
Keyword