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『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』村野博基・著 

賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。

今回は、書評『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』 (村野博基・著/扶桑社/2025年11月)を紹介します。

勝つことを目指さない「戦わない投資」の神髄とは

不動産投資は他者と勝ち負けを競うものではありません。しかし関連書籍を見ると「勝てる」「必勝」「最強」といった文言が数多く並んでいます。勝つ人がいれば、その一方には負ける人がいる。それだけ不動産投資の世界は生き馬の目を抜くように厳しい・・・と、そういった古くから考えられてきた投資法を否定し、冒頭から”投資は勝たなくていい、絶対に負けない「無敵」を目指そう“という章から始まるのが本書『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』です。

著者の村野博基氏は、2004年から不動産投資を開始し、毎年2~3戸ずつ物件を増やしてきました。2025年9月現在49歳で東京23区の区分マンションを中心に38戸、総資産は10億円、年間家賃収入は4000万円、キャッシュフローで約1500万円の収入があります。

20年以上にわたる不動産投資の経験から、”お金を「稼ぐ」「貯める」「増やす」「使う」という観点でのお金・投資にまつわる考え方“を30個の法則として紹介しています。

戦わない、負けないとは何か。大前提として、不動産投資のみならず投資全般において、できるだけ戦わないことが大事であり、”勝ち負けの土俵、つまり売買取引のなかでの利益は求めない“ことだと言います。

売買でのキャピタルゲインは勝ち負けを競うゼロサムゲームです。誰かが売却して利益を得れば、誰かが損をする。そうした勝負で”勝ち続けられる手法を見つけることはできませんでした“と述べています。

一方で、無敵の投資家になれるツールとして不動産投資があるとし、投資とは”所有することによって利益を出すこと“と記しています。実際に所有している物件の購入時期や築年数、利回りなどの一覧表がまとめられており、これまでの不動産投資において売却したのは僅か2戸のみ。徹底したインカムゲインの投資戦略を取っていることがわかります。

こうした「戦わない、負けない」を大前提に、利回りに偏重した投資選びではなく、キャッシュフローを重視することも重要なポイントです。100万円の利回り20%なら20万円ですが、1000万円の5%なら50万円。”そもそも我々投資家は利回りの高さが欲しいのでしょうか?そうではなく、お金を増やしたいのではなかったでしょうか“と問いを投げかけます。

また、かなりのページを割いて建物管理(管理組合)の重要性について紹介している点も大きな特徴です。

著者自身が”所有物件のうち27棟で管理組合役員(うち11棟は理事長)を務め“ており、建物管理がいかに物件の資産価値に影響を与えるのか、管理会社の見極め、「管理がヤバい」マンションのパターンなどを丁寧に解説しています。

その他にも、「自分自身の判断基準を鍛えよう」「お金が増える人の消費哲学」「負けない物件選びの鉄則」などの章が並び、決まったパターンにとらわれるのではなく、あくまでも考え方や法則を紹介しています。

初心者はもちろんベテラン投資家であっても、新たな発見があるかもしれません。なかには子どもへのマネーリテラシーの鍛え方なども紹介されており、不動産投資のジャンルに留まらない「お金の本」としても学びがある一冊です。

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