
書評『超ど素人がはじめる駐車場経営』矢島俊之・著
2025.7.10
賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。
今回は、書評『超ど素人がはじめる駐車場経営』(矢島俊之・著/ダイヤモンド社/2025/4)を紹介します。
なぜ駐車場経営が「不労所得の王様」なのか
先行き不安な日本経済においても、駐車場経営が「不労所得の王様」であると主張し、その魅力を紹介しているのが本書『超ど素人がはじめる駐車場経営』です。著者である矢島俊之氏は、ITエンジニアとして企業に勤める傍らで、親から相続した駐車場を経営しています。
駐車場経営の魅力は、なんと言っても他の不動産投資と比べて手間やコストがかからないこと。初期費用は当然のことながら、退去時のクリーニングやリフォームなども不要です。また災害による被害や事故物件化するリスクなども低く、管理会社に委託すれば集金やクレーム対応なども行ってくれるため、専門的な知識も不要でありながら、高利回りな不労所得となりえるのです。
ただ、人口・世帯の減少や「高齢者の免許返納」「若者の車離れ」といった昨今の風潮を見ると、駐車場経営を取り巻く環境も厳しいように感じます。しかし実は、日本国内での自動車保有台数は今もなお右肩上がりで増えていること、例えばマンションの住戸数に対しての駐車場の充足率は約65%であることのデータなどが示されており、まだまだ需要が高い産業であることがわかります。
本書では、そういった駐車場市場の現在そして今後の需要予測を紹介するだけでなく、実際の土地選びにおけるリサーチ方法やコインパーキングと月極駐車場それぞれに向いている条件、料金設定の考え方、駐車場近隣住人への配慮や防犯や安全面への意識なども細かく取り上げてられており、実践的な駐車場経営のノウハウを解説しています。
様々なパターンでの駐車場経営参入の可能性を想定している点も本書の特徴で、土地を購入して始めるパターンや借地で始めるパターン、そして所有している土地であることに加えて、相続した住宅を更地にして駐車場にするケースなども紹介しています。相続のケースでは、親の生前からこまめに実家に通い、不用品の破棄や生前整理をしておくことで、解体をスムーズに進めることができるという、リアリティのある細かな重要ポイントが紹介されています。
また、パートナーである管理会社選びにおいては、全国チェーンの大手なのか、地域密着型の小規模な会社などのかを、それぞれのメリットデメリットを比較しながら解説。月極駐車場の場合は地元密着の会社の方に軍配が上がるとしつつも、それよりも重要なポイントとして「相性」を挙げており、実際に事務所に行き、オフィスの雰囲気や担当者の人柄や姿勢をみることで見極めるという点は、そのほかの不動産投資における管理会社選びにも共通しているポイントとしても参考になるでしょう。
本書は駐車場経営の入門書でありながら、不動産投資全般に通じる本質的な教訓も含んでいます。市場データに基づいた冷静な判断、立地選びの重要性、そして何より信頼できるパートナー選びの大切さなど、どの分野の投資にも応用できる普遍的な原則が学べる一冊です。
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