
書評『8年間で5005室を埋めたコンサルタントが教える空室対策術』山岸加奈・著
2025.9.5
賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。
今回は、『8年間で5005室を埋めたコンサルタントが教える空室対策術』(山岸加奈・著/プラチナ出版/2025/7)を紹介します。
コンサルタントが解説する空室対策の極意
人口減少、少子高齢化などで賃貸業・不動産投資を取り巻く環境は決して楽観視できない状況になっています。問題は、賃貸需要の低下というかたちで現れ、地方・郊外から都市部へと徐々に広がっていきます。
そういった空室問題に対して、自身も不動産投資家でありながら、全国の空室5005室の入居付けを行ってきたコンサルタントの山岸加奈氏が、空室対策の具体的なノウハウから、賃貸経営の考え方をあますところなく紹介するのが本書『8年間で5005室を埋めたコンサルタントが教える空室対策術』です。
“どんな物件のどんな部屋であっても、どんな地域でも、私は空室を埋められるようになった”という山岸氏。
空室を埋めるために重要なことは、ペルソナを設定することであるといいます。ペルソナ設定とは”入居してほしい理想のお客様をできるだけ具体的に想定すること”で、性別や年齢から職業、年収、趣味趣向、独身既婚、子どもの有無や休日・趣味の過ごし方などまでを細かく想定していきます。
ペルソナを設定するメリットは、”「客付け業者が案内やすくなり内見者が増えること」。そして「成約スピードが速まること」”。具体的にターゲットを絞ることで、ステージングや表装のリノベーションを決め打ちで施すことが可能で、効率的な客付けを実現できるというものです。
一見すると、そんなうまい話があるのかと疑ってしまうペルソナ設定ですが、ペルソナを設定するまでには、現状を把握するために現地チェックや管理会社へのヒアリングなどの綿密な準備が必要であり、それを経たからこそ説得力のあるペルソナを見つけることができるのです。本書では、準備の手順やスムーズな進め方についても詳しく紹介しています。
また、空室を埋めるためにはオーナー自身の努力だけでなく、自主管理なら管理会社の管理委託の活用や周辺業者の協力を得て進めて行くことの大切さについても言及しています。
“大家さんは自分ひとりで空室を埋めるわけではなく、管理会社や仲介業者、それにリフォーム業者の協力が不可欠です。一緒に協力していただける方々へ頭を下げてお願いできる、チームリーダーとしての品格を持っていただきたい”という一文は、一昔前のふんぞり返ったオーナー像から現代のオーナーに、オーナー自身も変化しなければならないことが肝心なのです。
2020年出版の初版に、新たに時代に合わせた様々なノウハウを新章として加えた本作。特にオーナー自身が利用できる賃料査定をはじめとした様々なウェブサービスや、現代の時流に沿った賃料アップ術などについては、ベテラン投資家であっても知識をアップデートするよい情報源になるでしょう。
なによりも空室に悩んでいるオーナーにとっては、まずはなにから始めれば良いのかを示してくれる一冊になるはずです。
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