
書評『業者じゃないからここまで書けた!不動産投資をぶっちゃけます!!』南祐貴(セカニチ)・著
2025.5.9
賃貸経営の成功には、時代に応じた戦略と、長年の経験から得られる深い洞察が必要です。プロフェッショナルとして賃貸経営で成果を上げ続けている不動産投資家の著書を取り上げ、その知見を掘り下げていきます。
今回は、『業者じゃないからここまで書けた!不動産投資をぶっちゃけます!!』(南祐貴(セカニチ)・著/ダイヤモンド社/2025/3)を紹介します。
不動産投資は最もリスクの小さい投資
不動産投資は名前の通り、必ずしも成功が保証されているわけではありません。しかし、他の投資と比べて次の3つの優位点があると著者の南祐貴氏は指摘します。
- 大きなローンを引っ張れる
- リスクを最大限抑えられる
- 再開発の情報は無料で公開されている
南氏は1989年東京生まれ。大手広告代理店に入社後、新卒2年目の24歳で初めての不動産を購入。28歳までに不動産の購入3回、売却1回、リノベーション3回を経験し、13年以上にわたって不動産市場を観察してきました。
南氏は日本で不動産投資ができる環境を「出生ガチャの大成功」と表現します。その理由は、海外と比べて日本では投資でも頭金が少なくて済み、超低金利であること。さらに都心部の物価上昇やインフレも追い風となり「【正しい借金】と【正しい物件選び】さえすれば、不動産投資は最もリスクの小さい投資だ」と確信しているからです。
本書は序盤で投資環境の分析に多くのページを割き、海外大手ファンドの日本投資や円安傾向といった背景から、日本の不動産市場の底堅さを解説します。これは著者が不動産を単なる「箱モノ」ではなく、経済全体の文脈で捉える重要性を強調しているためです。
物件選びの要となる立地を「黄金の立地」と名付け、東京の主要都市をはじめ、神奈川、千葉、関西、地方都市の再開発情報をイラスト付きで紹介。2025年から2030年にかけて大規模再開発が予定されている渋谷、品川、新宿周辺を詳細に解説し、「駅徒歩5分以内」という従来の常識を超えた、将来性を見据えた立地選定の重要性を説いています。
さらに「業者にはかけない㊙リスト」として、一見好条件に見える物件の落とし穴も紹介。「NIMBY施設(嫌悪施設)」「ピロティ構造」「カーテンスキーム」といった細かなポイントについて、通常の物件説明では触れられない地雷要素を、軽妙でポップな語り口で実践的に解説しています。
本書の特徴は、不動産投資を広義に捉え、実需用の不動産購入でも需要の高い物件なら将来の値上がりによる含み益が見込めると指摘する点です。投資物件についても、現状のキャッシュフローや利回りに配慮しつつ、キャピタルゲイン(売却益)や将来の賃料上昇を見込んだ物件選定をすすめており、地価高騰やインフレ傾向を考慮した2025年現在の都心部における不動産投資の考え方と言えるでしょう。
また、「業者じゃないからここまで書けた!」というタイトルが体現されているのは、南氏が徹底的な比較を読者にすすめている点です。物件選定、立地や条件の比較、金融機関の比較、そして購入や賃貸経営の重要なパートナーとなる不動産会社の比較。著者は「騙される」「詐欺」といった言葉を躊躇なく使い、業者比較の重要性を強調しています。
不動産投資の入門書としてだけでなく、日本の不動産投資市場と周辺動向を把握するためにも役立つ一冊です。
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